慢性膵炎
慢性膵炎とは
慢性膵炎(まんせいすいえん)は、何らかの原因により長期間にわたって膵臓に炎症が続く病気です。
「膵石(すいせき)」と呼ばれる石が膵臓内にできることもあります。
膵臓は、消化酵素や血糖値を調整するホルモン(インスリン)を分泌する重要な臓器です。
膵臓に炎症が続くことで、その機能が徐々に低下し、消化不良や糖尿病などの合併症が現れたり、強い腹痛が起こることがあります。
また、慢性膵炎は膵癌のリスクを高めることが知られています。
ここでは、慢性膵炎の原因、症状、合併症、診断方法、治療法について詳しく解説します。
慢性膵炎の原因
慢性膵炎の主な原因は過度の飲酒です。
喫煙もリスク要因となり、生活習慣病としての側面が強いです。
また、特定の原因が見つからない「特発性慢性膵炎」というケースもあり、特に女性に多い傾向があります。
さらに、過度の飲酒をしても全ての人が慢性膵炎を発症するわけではなく、遺伝的要因も影響していると考えられています。
慢性膵炎の症状、合併症
慢性膵炎の代表的な症状、合併症には以下があります。
腹痛
上腹部に痛みが現れ、しばしば背中に広がることがあります。
痛みは食事後に悪化することもあり、慢性膵炎の初期に見られることが多い症状です。
消化不良
膵臓の消化酵素が不足することで、食べ物がうまく消化できず、下痢や脂肪便(白っぽく浮く便)が現れることがあります。
体重減少
栄養の吸収が不十分になるため、体重が減少します。
糖尿病
膵臓がインスリンを十分に分泌できず、糖尿病が進行することがあります。
膵癌
慢性膵炎は膵癌の重大な危険因子で、慢性膵炎の方は一般の方と比べて、5~15倍膵癌ができやすいとされています。
慢性膵炎の経過
慢性膵炎は、数年から数十年かけて進行する病気であり、以下の2つの段階に分かれます。
代償期(早期段階)
膵臓の消化酵素やインスリンの分泌が保たれている段階です。
この時期は腹痛が主な症状です。
非代償期(進行段階)
膵臓の機能が大きく低下し、消化不良や糖尿病、体重減少などの症状が現れます。
この段階では、腹痛が軽減または消失する一方で、膵臓の回復は困難となります。
早期慢性膵炎とは
慢性膵炎のごく初期段階を「早期慢性膵炎」と呼びます。
この段階で適切な診断と生活習慣の改善を含む治療を行うことで、膵臓の機能を保ち、慢性膵炎の進行や膵がんの発症を予防することが重要です。
<早期慢性膵炎の診断に役立つ検査>
早期慢性膵炎の診断には、超音波内視鏡検査(EUS)が有用です。
EUSとは、超音波装置が搭載された内視鏡(胃カメラ)を用いて、胃や十二指腸から膵臓を詳細に観察する検査です。
通常の画像検査では見つけにくい微細な変化も検出できるため、早期診断には欠かせない手段です。
慢性膵炎の診断方法
慢性膵炎の診断には、次のような検査が行われます。
- 血液検査
膵臓の酵素(アミラーゼ、リパーゼ)を測定し、炎症の有無を確認します。
- 画像検査(CT、MRI、超音波検査)
膵臓の状態を評価するために、CTスキャンやMRI、腹部超音波検査を行います。
- 超音波内視鏡検査(EUS)
EUSは、膵臓を詳細に観察できる検査法で、特に早期慢性膵炎の発見に有効です。
慢性膵炎の治療法
慢性膵炎の治療には、生活習慣の改善と薬物療法が含まれます。
生活習慣の改善
アルコール摂取を控え、禁煙することで膵臓の負担を減らし、病気の進行を遅らせる最も効果的な方法です。
また、慢性膵炎による腹痛が強い場合は脂肪分を減らした食事も有効です。
薬物療法
消化酵素不足による消化不良に対しては、消化酵素補充剤が処方されます。
また、痛みに対しては鎮痛剤が使用されます。
当院の取り組み
当院の医師は、これまで川崎市立川崎病院で多くの慢性膵炎の診療経験を積んでおり、現在も同病院で超音波内視鏡検査を実施しています。
当院の診察において、精密検査が必要と判断された場合には、迅速に検査を手配し、適切な診断と治療につなげます。
まとめ
慢性膵炎は、膵臓の機能が徐々に低下し、消化不良や糖尿病などの深刻な合併症を引き起こす可能性がある病気です。
特に早期の段階で診断と治療を行うことで、病気の進行を抑え、膵癌のリスクを減らすことができます。
気になる症状がある場合は、お気軽に当院にご相談ください。