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肺炎球菌感染症について

肺炎球菌感染症とは

肺炎球菌感染症とは、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)という細菌によって引き起こされる感染症です。肺炎球菌は、健康な人の喉や鼻に存在することがあり、通常は問題を引き起こしません。しかし、免疫力が低下した際や、乳幼児や高齢者、脾臓を摘出した方、慢性疾患(糖尿病や肝硬変、慢性腎不全など)を持つ方など、特定の条件下では感染を引き起こし、重篤な症状を引き起こすことがあります。

肺炎球菌による代表的な疾患は肺炎ですが、場合によっては、菌血症(血液に細菌が入る状態)や髄膜炎、中耳炎なども引き起こされることがあります。特に、高齢者や免疫力が低下している方にとっては、肺炎球菌感染症は命にかかわることがあるため、早期の治療や予防が重要です。

以下では、肺炎球菌感染症の主な症状や原因、治療法、そして予防法について詳しくご説明します。

肺炎球菌感染症によって引き起こされる疾患

肺炎球菌は様々な部位に感染する可能性がある疾患です。

肺炎球菌感染症によって引き起こされる主な疾患

1.肺炎

肺炎球菌感染症の中で一番多い疾患です。肺に感染し、高熱、咳、痰、息切れなどを引き起こします。

2.菌血症

菌が血液に侵入して全身に広がる状態です。高熱や意識混濁、多臓器不全を引き起こし、迅速な治療が必要です。放置すると命に関わることがあります。

3.髄膜炎

脳や脊髄を覆う髄膜に感染し、激しい頭痛や意識障害を引き起こします。髄膜炎も重篤な合併症を引き起こしやすいため早急な治療が必要です。

肺炎球菌感染症のリスク

肺炎球菌感染症は、主に飛沫感染(咳やくしゃみによって飛び散る細菌)や接触感染(細菌がついた手で口や鼻を触ること)によって広がります。特に以下の要因がある場合、感染リスクが高まります。

  • 免疫力の低下(加齢、糖尿病、肝硬変、慢性腎不全、がん、HIVなど)
  • 高齢者(65歳以上)や幼児
  • 脾臓摘出者、免疫抑制治療を受けている方

肺炎球菌感染症の治療

肺炎球菌感染症の治療には、抗生物質が使用されます。一般的にはペニシリン系やセフェム系の抗生物質が効果的ですが、近年では抗生物質に耐性を持つ肺炎球菌も増えているため、感染症の重症度や細菌の種類に応じて適切な治療が必要です。

重症例では、入院治療が必要となり、点滴での抗生物質投与や、酸素吸入、場合によっては集中治療室(ICU)での管理が行われることもあります。

肺炎球菌感染症の予防法

肺炎球菌感染症を予防する最も効果的な方法は、ワクチン接種です。日本では「プレベナー13(13価肺炎球菌ワクチン)」「バクニュバンス(15価肺炎球菌ワクチン)」「ニューモバックス(23価肺炎球菌ワクチン)」の3種類の肺炎球菌ワクチンが使用されています。それぞれのワクチンには以下の違いがあります。

1. 有効な肺炎球菌の種類

肺炎球菌は90種類以上存在しますが、ワクチンはその中でも病原性の高いタイプをカバーしています。

  • プレベナー13:13種類の肺炎球菌に対して有効。
  • バクニュバンス:プレベナー13がカバーする13種類に加え、新たに2種類の肺炎球菌をカバーし、15種類に対して有効です。
  •  ニューモバックス:24種類の肺炎球菌に対して有効。

ニューモバックスは、肺炎球菌感染症の原因となる約7割の肺炎球菌をカバーしており、プレベナー13/バクニュバンスは約5割の肺炎球菌をカバーしています。一見すると、ニューモバックスがより多くの種類に対応しているため優れているように思えますが、次に説明する持続期間に注目することが重要です。

2. ワクチンの持続期間

ワクチンの成分の違いにより、持続効果に差があります。

  • プレベナー13/バクニュバンス:1回の接種で長期間の予防効果が期待され、追加接種は基本的には不要です。
  • ニューモバックス:時間が経つと効果が弱まるため、5年ごとに再接種が必要です。

3. ワクチンの効果

それぞれのワクチンがカバーする肺炎球菌に対して、次のような予防効果が報告されています。

  • プレベナー13:肺炎球菌性肺炎に対して約45%、侵襲性肺炎球菌感染症(髄膜炎や菌血症など)に対して約75%の予防効果。
  • ニューモバックス:肺炎球菌性肺炎に対して約33%、侵襲性肺炎球菌感染症に対して約42%の予防効果。
  • バクニュバンス:プレベナー13に新たに2種類の菌株をカバーしますが、現在のところ、成人においてはプレベナー13より優れた予防効果を示すデータは不足しています。

公費助成について

日本では、65歳時に接種するニューモバックスのみが公費助成の対象となっています。プレベナー13は補助対象外のため、任意接種となります。

ワクチン接種後の副反応

一般的に、ニューモバックスはプレベナー13と比べて、副反応が出る可能性が若干高いとされています。以下のような副反応が見られることがあります:

  • 注射した部分の痛み、赤み、腫れ。
  • 筋肉痛や頭痛、疲労感。

これらの症状は通常、2~3日で改善します。ごく稀に重篤なアレルギー反応(アナフィラキシーショック)が起こる可能性があるため、接種後は10~15分ほど病院で待機することが推奨されています。

ワクチンの比較まとめ

ワクチンの比較まとめ

ニューモバックス
  • より多くの種類の肺炎球菌(24種類)をカバー。
  • 5年ごとに再接種が必要。
  • 公費助成あり (65歳時のみ。)
プレベナー13/バクニュバンス
  • 13種類/15種類の肺炎球菌をカバー。
  • 1回の接種で長期間の予防効果が期待でき、追加接種は不要。
  • 公費助成なし

自己負担額

プレベナー13

:1回 10,000円

ニューモバックス:
  • 公費助成あり:4,500円
  • 公費助成なし:10,000円

公費助成の対象

  • 65歳の方(誕生日前日から66歳の誕生日前日まで)
  • 60歳以上65歳未満の方で、特定の基礎疾患を持つ方(心臓、腎臓、呼吸器の機能障害が1級程度の方、または免疫機能障害が1級程度の方)
    過去にニューモバックスを接種している方は、対象外となります。

どちらを接種すべきか

どちらか一方のワクチンでも予防効果はありますが、両方のワクチンを接種することで、より高い予防効果を得られます。2種類のワクチンを接種することで、ブースター効果(相乗効果)が期待できます。特に、プレベナー/バクニュバンスを接種した後に1年あけてニューモバックスを接種した方がよりブースター効果が得られやすいとされています。

ただし、川崎市で公費助成が受けられるのは、65歳時に接種するニューモバックスのみとなるため、次の接種スケジュールが多くの方に採用されています。

  1. 65歳の時にニューモバックスを公費助成で接種。
  2. 1年以上の間隔をあけてプレベナー13を接種。
  3. その後、5年ごとにニューモバックスを再接種。
    また、公費助成を利用しない場合は、プレベナー13を先に接種し、1年以上の間隔を空けてニューモバックスを接種することも可能です。
    このようなスケジュールで接種する、肺炎球菌感染症に対する予防効果がさらに高まります。ワクチン接種の順番など、ご不明な点があれば、いつでもご相談ください。

まとめ

肺炎球菌感染症は、特に高齢者や免疫力が低下している方にとって、重大なリスクとなる感染症です。ワクチン接種は非常に効果的な予防手段であり、プレベナー13やニューモバックスを活用した予防が推奨されています。

当院では、プレベナー13、ニューモバックスのどちらのワクチンも接種可能です。ご希望の方やご質問がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。

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