内視鏡検査で見つかった「粘膜下腫瘍」とは? がんなの? 消化器内科専門医がわかりやすく解説
「胃カメラで“粘膜下腫瘍(ねんまくかしゅよう)”と言われました」
「悪いものではないか心配です」
外来でも、このようなご相談を受けることがあります。
“腫瘍”という言葉を聞くと、「がんではないか」と不安になる方も多いと思います。
しかし、実際には 粘膜下腫瘍の多くは良性(=命に直結しない) のものです。
ただし、粘膜下腫瘍は見つけることは簡単でも、その正体を見極めるのが難しいという特徴もあります。
この記事では、食道・胃・大腸などにできる「粘膜下腫瘍」について、
種類・原因・検査方法・治療方針を、できるだけわかりやすくご紹介します。
📘 この記事でわかること
内視鏡検査を受けて「粘膜下腫瘍」と言われた方に向けて、この記事では次のポイントをわかりやすくまとめています。
粘膜下腫瘍とは?
ポリープとの違い・できる場所について解説します。
主な種類
良性・悪性を含む代表的な病変を紹介します。
症状の有無
多くが無症状で見つかる理由と、注意すべき症状を説明します。
診断の流れ
内視鏡での観察ポイントや、必要に応じた追加検査(EUS・CT・MRI・生検)を紹介します。
治療の種類
治療が必要と判断された場合に行われる、開腹手術や内視鏡治療などの主な治療法を簡潔に紹介します。
当院でできること(川崎区 花田内科胃腸科医院)
丁寧な内視鏡観察、苦痛の少ない鎮静検査、連携病院での精密検査体制をご案内します。
粘膜下腫瘍とは? ポリープとの違い
ポリープとの違いは「どの層にできるか」
胃や大腸の壁は、「粘膜」「粘膜筋板」「粘膜下層」「固有筋層」「漿膜」など、いくつかの層でできています。
胃や大腸の壁
そのうち、粘膜下腫瘍(最近では、上皮下腫瘍とも呼ばれます)とは、
名前の通り “粘膜の下の層にできる腫瘍” のことです。
内視鏡で見ると表面の粘膜はきれいなままで、下からぐっと押し上げられているように見えるのが特徴です。
一方、ポリープは粘膜そのものにできるイボ状の隆起です。
どちらも内視鏡上では「出っ張り」として見えますが、
出っ張りそのものが病変(=ポリープ)なのか
粘膜の下にできた病変が盛り上げて見えている(=粘膜下腫瘍) のか
という“できものが生じる場所の違い”が大きなポイントです。(下図)
内視鏡写真
実際の内視鏡写真では次のように違って見えます。
ポリープ
画面真ん中のイボのようなものがポリープ(胃)です。
粘膜下腫瘍
近づいた内視鏡画像
出っ張りの部分が粘膜下腫瘍です。
先ほどのポリープとは違い、出っ張りの表面は周りの粘膜と変わりなく、下から押し上げられているような形になっています。
ポリープと粘膜下腫瘍のどちらが良性・悪性という単純な区別はありません。
元々の発生する層が違うため、性質や治療方針も変わってきます。
そのため、内視鏡で“盛り上がり”を見たときには、まず
「ポリープなのか」「粘膜下腫瘍なのか」
をしっかり見分けることが、診断や今後の方針を決める上でとても重要です。
主な種類
「粘膜下腫瘍」といっても、実際にはさまざまな種類があります。
多くは良性ですが、中には悪性の性質を持つものもあります。代表的なものを挙げます。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| GIST(ジスト) | 胃や小腸などにできる腫瘍で、悪性の性質を持ちます。 |
| 平滑筋腫(へいかつきんしゅ) | 筋肉の細胞から発生する良性の腫瘍です。 |
| 脂肪腫(しぼうしゅ) | 脂肪細胞からできる、やわらかい良性のしこりです。 |
| 神経鞘腫(しんけいしょうしゅ) | 神経の周囲の細胞から発生し、多くは良性です。 |
| 嚢胞(のうほう) | 中に液体がたまった袋状の構造で、厳密には腫瘍ではありません。 |
| 異所性膵(いしょせいすい) | 本来膵臓にあるはずの組織が胃に存在する状態で、こちらも腫瘍ではありません。 |
これら以外にも粘膜下腫瘍には多くの種類があり、すべてを内視鏡だけで見分けることは簡単ではありません。
特に 2cm以下の小さな病変では種類の特定が難しく、どの腫瘍がどれくらいの割合で存在するかという“正確な頻度”はわかっていません。
ただし、小さな粘膜下腫瘍は経過観察でも変化のないことが多く、良性であることが多いです。
命にかかわるものは少ないため、慌てる必要はありません。
症状はあるの?
多くの場合、自覚症状はありません。
胃カメラや大腸カメラなどの検査中に、偶然見つかることがほとんどです。
ただし、腫瘍が大きくなると、次のような症状が出ることがあります。
胃の違和感や痛み
食後のもたれや吐き気
出血(便が黒くなる、ふだんより赤みが混じる など)
もともと粘膜下腫瘍を指摘されている方で、上記のような症状が新たに出てきた場合は、早めの受診をおすすめします。
どうやって診断するの?
粘膜下腫瘍そのものを内視鏡で見つけることは比較的容易です。
しかし、その正体(どの種類の腫瘍か)を見分けるのは、通常の内視鏡だけでは難しい場合があります。
その理由は、腫瘍の本体が“粘膜の下”に隠れており、表面は正常に見えることが多いためです。
内視鏡で観察できるのは粘膜表面のみであり、腫瘍そのものが直接見えるわけではありません。
また、ポリープのように表面から簡単に組織を採取できない点も、診断を難しくしている理由のひとつです。
内視鏡医が観察するポイント
内視鏡で粘膜下腫瘍を認めた場合、次のような特徴を丁寧に観察します。
大きさ
形(表面が平滑か、凹凸があるか)
色調(例えば、脂肪腫では黄色が透けて見えることがあります)
粘膜表面の変化(傷・陥凹・びらんなど)
これらを総合的に判断し、良性か悪性の可能性を推測します。
さらに重要なのは、時間の経過による変化です。
悪性腫瘍は時間とともに大きくなったり、形が変化したりすることがあるため、
定期的な経過観察(フォローアップ)が非常に大切です。
どのくらいの頻度でフォローするかは個々の状態によって異なりますが、
一般的には 6か月〜1年に1回の検査で経過をみるケースが多いです。
さらに詳しく調べるための検査
通常の内視鏡で悪性の可能性が否定できない場合、次の検査を追加することがあります。
① 超音波内視鏡(EUS)
胃カメラの先端に小型の超音波装置をつけ、
腫瘍の内部構造や、どの層から発生しているかを詳しく調べます。
粘膜下腫瘍の診断に非常に有用です。
② CT・MRI検査
腫瘍の大きさ・位置・広がり・内部構造を確認します。
③ 組織検査(超音波内視鏡下針生検 / 粘膜切開生検など)
超音波内視鏡を使って細い針で細胞を採取したり、
粘膜を一部切開して腫瘍表面を露出させて検体を採取する方法です。
顕微鏡で詳しく調べることで、より正確な診断につながります。
どういった治療があるのか?
粘膜下腫瘍の治療は、すべての方に必要なわけではありません。
しかし、悪性の可能性が高いと判断された場合や症状を伴う場合は、適切な治療が重要です。
治療法は 腫瘍の種類・大きさ・位置・広がり によって大きく変わります。
以前は、腫瘍を切除する方法といえば
外科手術(開腹手術) が一般的でした。
しかし現在では、条件を満たせば
内視鏡と腹腔鏡を組み合わせた手術や内視鏡のみでの切除(内視鏡治療) が可能なケースも増えてきています。
内視鏡を用いた治療は、外科手術(開腹手術)と比べて
体への負担が小さい
傷が小さく済む
回復が早い
といったメリットがあります。
そのため、内視鏡治療が可能な段階で診断できることが理想といえます。
適切なタイミングで診断するためにも、定期的な経過観察は非常に重要です。
当院での対応
当院では、まず 通常の内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)を用いて詳細に観察します。
先ほど述べたような特徴(大きさ・形・色調・表面の変化)をしっかりと確認し、
悪性を疑う所見があるかどうかを丁寧に評価します。
-
経過観察が適切な場合
→ 当院の胃カメラで継続して観察を行います。
→ 繰り返しの内視鏡検査が必要となるため、鎮静剤・鎮痛剤を適切に使用し、苦痛の少ない検査を心がけています。 -
より詳しい評価(精密検査)が必要な場合
→ 超音波内視鏡(EUS)やCT・MRI、組織検査(針生検や粘膜切開生検)は、
連携している病院でスムーズに検査が受けられるよう手配します。
当院では「まず内視鏡でしっかり観察し、必要に応じて連携病院で精査する」という流れを大切にし、
患者さんにとって最も適切な診断につながるよう対応しています。
まとめ
粘膜下腫瘍の多くは良性で、命に関わるものは多くありません。
一方で、通常の内視鏡だけでは種類を正確に判別することが難しいため、
「まず見つける → 状態を見極める → 必要に応じて精密検査や経過観察」という流れがとても大切になります。
また、すぐに精密検査が必要ないと判断された場合でも、
定期的な経過観察がとても重要な病変です。
時間の経過による変化を観察することで、より正確に状態を把握できます。
当院では、胃カメラ・大腸カメラで丁寧に観察し、
必要があれば連携病院と協力して超音波内視鏡(EUS)やCT・MRIなどの精密検査につなげています。
経過観察が必要な場合には、鎮静剤・鎮痛剤を使用し、負担の少ない内視鏡検査を心がけています。
粘膜下腫瘍を指摘されて不安な方は、
ひとりで悩まず、お気軽にご相談ください。
適切な検査とフォローアップによって、多くの方は安心して日常生活を送ることができます。
