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胃もたれ・消化不良が続く…機能性ディスペプシアとは?

[2025.03.18]

はじめに

「食後に胃が重く感じる…」
「少し食べただけでお腹がいっぱいになる…」
「なんとなく胃が不快だけど、検査では異常なしと言われた…」

こんな症状が続いていませんか?胃の不調を感じているのに、胃カメラや血液検査では特に異常が見つからない場合、機能性ディスペプシア(FD:Functional Dyspepsia) という病気の可能性があります。

機能性ディスペプシアは、胃の動きの異常やストレス、自律神経の影響などが原因で起こると考えられており、日本人の約10~15%がこの病気に悩まされていると言われています。

今回は、機能性ディスペプシアの症状や原因、治療法、日常生活での対策、さらには最近注目されている機能性ディスペプシアと間違えられやすい病気について詳しく解説します。

 

機能性ディスペプシアとは?

機能性ディスペプシア(FD)とは、胃の不調が続いているにもかかわらず、胃カメラなどの検査で明らかな異常が見つからない状態を指します。「ディスペプシア」という言葉はあまり聞き慣れないかもしれませんが、元々はギリシャ語で「消化不良」を意味する言葉です。

この病気は 胃の機能に異常が生じることで、胃もたれや消化不良、食欲の低下、胃痛などの症状が続く のが特徴です。

かつては「慢性胃炎」や「神経性胃炎」と呼ばれることもありましたが、現在では 炎症などの明確な異常がないにもかかわらず症状が続く病気 として認識されています。

機能性ディスペプシアの主な症状

機能性ディスペプシアの症状は、大きく2つのタイプに分けられます。

食後愁訴(しゅうそ)症候群(PDS:Postprandial Distress Syndrome)

食事の後に胃が重くなったり、不快感が続くタイプ。

✅ 食後の胃もたれ
✅ 少し食べただけで満腹になってしまう(早期飽満感)
✅ 食事をすると胃が圧迫されるような感じがする

心窩部痛症候群(EPS:Epigastric Pain Syndrome)

胃の痛みや灼熱感(焼けるような痛み)を感じるタイプ。

✅ みぞおちのあたりが痛む
✅ 空腹時や食後に胃の痛みがある
✅ 胃がチクチクするような違和感

どちらか一方の症状だけが現れることもあれば、 両方の症状が同時に出ることもあります

これらの症状が続いているにもかかわらず、胃カメラなどの検査で明らかな異常がない場合、機能性ディスペプシアと診断されます。

機能性ディスペプシアの原因

機能性ディスペプシアの原因は ひとつではなく、複数の要因が関与している と考えられています。

胃の動き(蠕動運動)の異常

通常、食べ物は 胃の蠕動(ぜんどう)運動 によってスムーズに腸へ送られます。しかし、機能性ディスペプシアの人では この動きが鈍くなり、食べ物が胃に停滞しやすく なります。その結果、胃もたれや消化不良を感じることがあります。

胃の知覚過敏

胃が 普通の人よりも敏感になっている ため、少しの刺激でも痛みや不快感を感じやすくなります。

ストレスや自律神経の乱れ

ストレスや緊張、不安があると 自律神経のバランスが崩れ、胃の働きが低下 します。特に ストレスを受けやすい人は、胃の動きが乱れやすく、機能性ディスペプシアの症状が出やすい と言われています。

ピロリ菌感染

 ピロリ菌が関与している場合もあります。 ピロリ菌が原因で 胃の炎症が続くと、機能性ディスペプシアのような症状を引き起こす ことがあります。ただし、この場合は ピロリ菌による炎症が原因であるため、厳密には機能性ディスペプシアとは異なります。

食生活の乱れ

脂っこい食事や刺激の強い食べ物、アルコール、コーヒー などは胃に負担をかけ、症状を悪化させることがあります。

機能性ディスペプシアの診断

機能性ディスペプシアは 病歴や症状から診断される病気 です。診断には、食道や胃に炎症や腫瘍などの明らかな異常がないことが前提 となります。

そのため、これらの異常がないことを確認するには 内視鏡検査(胃カメラ検査)が最も有用 です。

ただし、診断に必ず内視鏡検査が必要というわけではありません。 年齢や診察所見を踏まえ、明らかな病気がないと判断できる場合は、内視鏡検査をせずに機能性ディスペプシアと診断し、治療を開始することもあります。

内視鏡検査を受けたほうがよいケース

以下の症状がある方は、重大な病気が隠れている可能性があるため、内視鏡検査を受けることが推奨されます。

高齢で新たに症状が出た
体重減少
繰り返す嘔吐
消化管からの出血(黒色便や吐血など)
食べ物が飲み込みにくい(嚥下障害)や、飲み込むときの痛み(嚥下時痛)
お腹にしこりを感じる(腹部腫瘤)
発熱が続く
食道がんや胃がんの家族歴がある
✅ 治療を行っても症状が改善しない

これらの項目に当てはまる方は、放置せずに早めの検査をおすすめします。

機能性ディスペプシア症状に関連する最近の話題 〜早期慢性膵炎とは〜

近年の研究で、機能性ディスペプシアの症状がある方の中に、「早期慢性膵炎」という膵臓の病気が隠れているケースがあることが分かってきました。

早期慢性膵炎とは、膵臓に軽い炎症が持続的に起こる病気 で、その症状は機能性ディスペプシアと似ていることがあります。

例えば、食後の腹痛や胃もたれ、消化不良のような不快感 などが挙げられます。

 

「膵炎」と聞くと、お酒の影響を思い浮かべる方が多いかもしれません。

しかし、最近の研究では、飲酒量が少なくても、体質によって早期慢性膵炎を発症しやすいことが分かっています。

もし機能性ディスペプシアの治療を続けても なかなか症状が改善しない場合、早期慢性膵炎の可能性も考慮する必要があります。その場合、膵臓の酵素を調べる血液検査や、超音波検査で膵臓の状態を詳しくチェックすることが大切です。

当院でも、機能性ディスペプシアの治療で改善が見られない方には、慢性膵炎の可能性を考慮し、適切な検査を行っています。

機能性ディスペプシアの治療と対策

① 薬による治療

症状が続く場合、以下の薬を使って治療を行います。

💊 胃の動きを改善する薬(消化管運動機能改善薬・漢方薬)
  → 胃の働きを活発にし、食べ物をスムーズに腸へ送る

💊 胃酸を抑える薬(PPI・H2ブロッカー)
  → 胃酸の分泌を抑え、胃の負担を軽減する

💊 ストレスを和らげる薬(抗うつ薬・抗不安薬)
  → 自律神経のバランスを整え、症状を和らげる

どの薬を使うかは、

🔹 胃もたれや消化不良が主な症状か
🔹 胃痛が主な症状か

によって異なります。

食生活の改善

ゆっくりよく噛んで食べる(胃の負担を減らすため)
脂っこいものや刺激物(唐辛子・カフェイン・アルコール)を控える
食べ過ぎを避け、少量ずつこまめに食べる

③ ストレス管理

適度な運動をする(ウォーキング・ストレッチなど)
リラックスできる時間を作る(入浴・深呼吸・趣味など)

④ ピロリ菌の除菌(必要な場合)

ピロリ菌感染がある場合、除菌治療を行うことで症状が改善することがあります。

まとめ:機能性ディスペプシアとうまく付き合うには?

機能性ディスペプシアは、命に関わる病気ではありませんが、生活の質(QOL)を大きく低下させる病気 です。

☑ 胃の検査で異常がないのに、胃もたれや不快感が続く場合は機能性ディスペプシアの可能性がある
☑ ストレスや食生活の乱れが原因となることが多い
☑ 胃の動きを改善する薬や、胃酸を抑える薬で治療できる
☑ 食事の見直しやストレス管理も重要なポイント!

「もしかして…」と思ったら、一度 消化器内科を受診し、適切な検査・治療を受けること をおすすめします。症状が続くとつらいですが、生活習慣を見直し、うまく対策を取れば改善できる病気です。

気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください!

 

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