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肝硬変につながる?脂肪肝のリスクと進行を防ぐ方法

[2025.02.06]

健康診断や人間ドックで「脂肪肝」と指摘されたことはありませんか?


脂肪肝といわれても自覚症状がなく、「どんなリスクがあるかわからない」「どう対処すればよいのかわからない」と感じる方も多いのではないでしょうか。
その結果、特に意識せずに過ごし、気づけば毎年の健康診断で肝機能異常を指摘されている という方も少なくありません。

しかし、脂肪肝の中には、放置すると 肝硬変や肝癌 に進行するものがあります。特に 肝硬変は一度進行すると元に戻すことができないため、早めの対応が重要 です。

今回は、脂肪肝の基本的な知識、そのリスク、そして進行を防ぐための方法について解説します。

今回のポイント

脂肪肝とは? 肝臓は「貯蔵庫」

脂肪肝とは、肝臓に脂肪が多くたまった状態のことをいいます。

肝臓は最も大きな臓器であり、様々な重要な役割を担っています。

その中の一つが、栄養素の貯蔵庫としての役割があります。食事でとった脂肪分だけでなく、糖質やタンパク質も、必要以上に摂ると脂肪に変えられ、肝臓に蓄えられます。

しかし、食べ過ぎや運動不足などのために食事でとったカロリーが消費量を上回る状態が続くと、肝臓で中性脂肪が多く蓄えられ、その結果脂肪肝となります。

 

脂肪肝が引き起こす問題

肝臓は「沈黙の臓器と呼ばれ、脂肪肝があっても自覚症状はほとんどありません。

しかし、脂肪肝が進行すると、さまざまな健康リスクを引き起こす可能性があります。

大きく分けると、以下の2つの問題があります。

1. 肝臓の問題

脂肪肝が長期間続くと、肝臓にダメージが蓄積し、次第に深刻な病気へと進行することがあります。

肝癌

肝臓に長期間のダメージが加わると、細胞が異常をきたし、肝癌が発生しやすくなります。

肝硬変

長期間の炎症により、肝臓の組織が「線維化」し、硬くなります。この状態を肝硬変と言います。

肝硬変になると、肝臓本来の機能が低下し、次のような症状が現れることがあります。

    • 強い倦怠感(だるさ)
    • 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
    • 腹水(お腹に水がたまる)

 

近年、脂肪肝を原因とした肝癌や肝硬変の割合が増加しているので特に注意が必要です。

2. 肝臓以外の問題

脂肪肝は肝臓だけでなく、他の臓器にも影響を及ぼします。

特に、以下のような病気のリスクが高まることが分かっています。

動脈硬化による血管障害

 脳梗塞、脳出血、心筋梗塞 など

肝臓以外の癌のリスク増加

 大腸癌、食道癌、膵臓癌、乳癌、子宮体癌 など

 

脂肪肝にも種類がある

脂肪肝はすべてが深刻な問題を引き起こすわけではありません。
しかし、生活習慣に関連した特定のタイプの脂肪肝は、肝硬変や肝癌に進行するリスクが高いため、注意が必要です。

特に問題となりやすい脂肪肝

以下の2つのタイプが、健康リスクが高い脂肪肝とされています。

 

  1. 代謝機能障害を伴う脂肪肝

     肥満、糖尿病、高血圧、高中性脂肪、低HDL血症(これらを「代謝機能障害」と言います)のいずれかを合併した脂肪肝


  2. アルコールの飲み過ぎによる脂肪肝

     過度な飲酒が原因で発生する脂肪肝

脂肪肝の分類

問題となりやすい脂肪肝は、「代謝機能障害の合併」や「飲酒量」によって次のように分類されます。

  1. MASLD(Metabolic dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease)
    代謝機能障害を伴う脂肪肝

  2. MetALD(Metabolic dysfunction-Associated Alcohol-Related Liver Disease)
    代謝機能障害があり、飲酒量が一定以上の脂肪肝

  3. ALD (Alcohol-Related Liver Disease)
    飲酒量が特に多い脂肪肝

なぜこれらの脂肪肝が危険なのか?

これらの脂肪肝は、肝硬変や肝癌への進行リスクが高いだけでなく、他の臓器(心血管・腎臓など)にも影響を及ぼす可能性があるため、早めの対策が重要です。

脂肪肝は早い段階で対応するのが重要

脂肪肝の治療で最も大切なのは、症状がない段階で対策を始めることです。

その理由は、肝硬変に進行すると肝臓の回復が難しくなるためです。
また、脂肪肝が進行すると肝癌のリスクが高まり、場合によっては手術や抗がん剤治療が必要になることもあります。

しかし、肝硬変や肝癌に至る前に適切な対策を行えば、健康な肝臓を維持することができます。

そのため、自覚症状がない段階で脂肪肝を改善することが重要です。

脂肪肝の治療は生活習慣の改善が基本

現在、日本には「脂肪肝に特化した治療薬」はありません。
ただし、糖尿病の薬が脂肪肝の改善に役立つことや、ビタミンEに効果が期待できることが報告されています。

では、脂肪肝の治療として他に何ができるのでしょうか?

鍵となるのは「生活習慣の改善」です。

キーワードは「7%の減量」

研究によると、体重を7%減らすことで脂肪肝が改善するとされています。
例えば、体重70kgの方なら約5kgの減量が目標になります。

ただし、元々痩せている方は、過度なダイエットは筋力低下を引き起こしかえってよくありません。
BMI 18.5未満の方は過度なダイエットは控えましょう。

※ BMI 体重(kg)➗身長(m)の2乗

 

 

生活習慣の改善は、以下の3点がポイントになります。

  • 食生活の改善
  • 運動習慣
  • 節酒

① 食生活の改善

脂肪肝を改善するために重要な食生活のポイントは、以下の3つです。

1.食事のタイミングとパターン

以下の食習慣は、脂肪肝の悪化リスクを高めるとされています。

  • 朝食を抜く

  • 夜間の間食

  • 活動時間外の高カロリーな食事

脂肪肝の予防・改善には、1日3食を規則正しく食べることが大切です。
間食はできるだけ控え、どうしても摂る場合は日中にしましょう。

仕事の関係で食事の時間が不規則になる方もいるかと思います。
その場合は、活動前にしっかり食べ、休む前の食事は控えめにすることを意識しましょう。

 

2.食事の早さ

以下の食べ方も脂肪肝の悪化に関係しています。

  • 早食い

  • よく噛まないで食べる

よく噛んで食べることは、過食の予防につながります。
よく噛むことで膵臓からのインスリン分泌が促進され、食欲を抑える効果が期待できるため、意識してゆっくり食べることが大切です。


3.食事の内容

以下の点に注意しましょう。

  • ラード・バター・マーガリン・揚げ物などの脂質の多い食品は控える

  • 果糖を多く含む清涼飲料水は控える

  • 野菜・豆類・きのこ類を積極的に摂取する


 また、過度な炭水化物の制限には注意が必要です。

「炭水化物を極端に減らす」ことで、おかずの量が増え、かえって脂質の摂取量が増加してしまうことがあります。さらに、摂取したタンパク質が体内で有効に利用されなくなる可能性もあります。

<栄養相談のご案内>

食事に関してもっと詳しく知りたい方には、管理栄養士による食事サポート」を受ける機会を設けています。(川崎市立川崎病院にて行います)
ご希望の方は、ぜひご相談ください。

② 運動習慣

運動は脂肪肝の改善にとても効果的です。
特に、肥満ではない脂肪肝の方は筋力が低下していることが多く、運動による改善効果が高いとされています。

<どんな運動が効果的?>

理想的なのは、有酸素運動を1回30分以上、週3回行うことです。
しかし、まずは週1回からでも始めることが大切です。

 おすすめの運動

  • ウォーキング

  • ジョギング

  • 水泳 など

続けられるものを選び、無理のない範囲で習慣化しましょう。
また、筋力トレーニング(スクワット・腕立て伏せなど)を加えると、脂肪肝改善効果がさらに高まります。

 

<忙しくて運動する時間がない…という方へ>

日常生活の中で、少しずつ体を動かす工夫をしましょう。

  • エレベーターではなく階段を使う

  • 通勤時に歩く距離を増やす

こうした小さな積み重ねが、脂肪肝の改善につながります。

③ 節酒

お酒をよく飲まれる方は、まずは飲酒量を見直しましょう。
過度の飲酒は肝臓に負担をかけ、脂肪肝を引き起こす原因となります。特に、アルコールによる脂肪肝は健康リスクが高いとされています。

以下の量を超えて飲酒している方は、健康のために飲酒量を減らすことが重要です。

  • ビール:750ml/日(中瓶1本半程度)

  • 焼酎:1合(180ml/日)

  • ワイン:グラス2杯/日

 

日々の飲酒習慣を見直し、肝臓を守ることを意識しましょう。

薬物療法

現時点では、日本には「脂肪肝の特効薬」は存在しません。

しかし、脂肪肝の方は 高血圧・脂質異常症・糖尿病を合併していることが多く、これらの治療が必要になるケースがあります。

また、一部の糖尿病治療薬には 脂肪肝の改善効果が期待できるものもあります。

気になる方は、お気軽にご相談ください。

まとめ

  • 脂肪肝の一部は放置すると肝硬変・肝癌につながる可能性がある
  • 自覚症状がない段階で対応するのが重要
  • 治療の基本は、食生活の改善・運動・節酒

脂肪肝を改善するためには、 「できることから少しずつ」 が大切です。

「脂肪肝が心配…」「肝臓の数値が高かった…」という方は、ぜひ 早めの受診をおすすめします!

 

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