食後に胃がキリキリ痛む…それ、胃潰瘍かも? 知っておきたい症状と原因
「その胃の痛み、大丈夫?」—放っておくと危険かも?
「朝食後、みぞおちがキリキリ痛む。『またストレスのせいかな?』と気にせず過ごしていたら、夜中に痛みで目が覚めた…。」
こんな経験、ありませんか?
その胃の痛み、実は胃潰瘍が原因かもしれません。
「そのうち治るだろう」と放っておくと、知らないうちに悪化してしまうこともあるため注意が必要です。
胃潰瘍とは、胃の粘膜に深い傷ができる病気 です。進行すると、出血や胃に穴があく(穿孔) など、より深刻な状態になることもあります。
今回は、胃潰瘍のサイン(症状)や主な原因、そして放置するとどうなるのか について詳しく解説します!
胃潰瘍を疑う症状
胃潰瘍の初期症状は、胃腸炎などの「よくある胃の不調」と似ているため、見逃しやすい ことがあります。しかし、次のような症状がある場合は、胃潰瘍の可能性 も考えられます。
✅ 食後にみぞおち付近が痛む状態が1週間以上続く
✅ 食べると痛みが悪化し、食べないと少し楽になる
✅ 嘔吐や下痢は少なく、痛みが強い
一方で、十二指腸潰瘍(胃の出口から続く小腸の一部) の場合は、空腹時に痛みが強くなる のが特徴です。
「食後に痛むのか、それとも空腹時に痛むのか」 をチェックすることで、どの部位に潰瘍があるのか推測しやすくなります。
また、腹痛に加えて、次の症状がある場合は、胃潰瘍からの出血が疑われるため、すぐに医療機関を受診してください。
🔴 黒くツヤツヤした便が出る
🔴 黒いものを吐く
血液は本来赤いですが、胃酸により酸化され黒くなります。
そのため、胃の中で出血した場合は、黒い便や嘔吐物として現れることがあります。
胃潰瘍の原因
胃潰瘍は、胃の粘膜が炎症を起こし、傷つくこと によって発生します。
その主な原因は 「ピロリ菌感染」と「鎮痛薬(NSAIDs)の長期服用」 の2つです。
これに加えて、生活習慣などの要因が重なることで、胃潰瘍のリスクがさらに高まる ことが知られています。
① ピロリ菌感染(最も多い原因)
「胃潰瘍=ストレスが原因」と思われがちですが、実は最も多い原因はピロリ菌感染 です。
ピロリ菌は、胃の粘膜に住みつき、慢性的な炎症を引き起こします。その結果、胃潰瘍を発症しやすくなります。また、長期間ピロリ菌に感染したままだと、胃がんのリスクも高まる ことが分かっています。
※ ピロリ菌はどうやって感染する?
ピロリ菌は 幼少期に感染することがほとんどで、大人になってから新たに感染することはほとんどありません。
かつては 井戸水の摂取 で感染すると言われていましたが、現代では 家族間での食器の共有 などを通じた感染も指摘されています。
② 痛み止め(NSAIDs)の長期服用
ロキソニンやイブプロフェンなどの 鎮痛薬(NSAIDs) は、胃の粘膜を保護する物質(プロスタグランジン)の分泌を抑えてしまいます。そのため、長期間服用すると胃の粘膜が弱くなり、胃潰瘍を発症するリスクが高まります。
③ 胃潰瘍を悪化させる要因
ピロリ菌感染やNSAIDsの服用が背景にある場合、以下の要因が重なることで 胃潰瘍の発症リスクがさらに高まる ことが分かっています。
🔹 ストレスや睡眠不足
🔹 アルコールの飲みすぎ
🔹 喫煙
🔹 辛いもの、脂っこい食事
ただし、これらの要因 単独では胃潰瘍を引き起こすことは稀であり、ピロリ菌感染やNSAIDsの服用が背景にある場合にリスクをより高める ことがあります。
放置するとどうなる? 胃潰瘍のリスク
胃潰瘍を放置すると、次のような深刻な症状を引き起こすことがあります。
🔴 出血(吐血・黒色便)
🔴 穿孔(胃に穴が開く)
🔴 胃がんのリスク増加
出血や穿孔は緊急処置が必要になります。
良性の胃潰瘍自体が癌化することはありませんが、その原因となるピロリ菌感染が続くと、胃がんのリスクは上昇します。
また、良性の胃潰瘍と考えられていたものが、実は悪性(胃がん)だった、ということも稀にあるため、定期的な診察・検査は必要です。
胃潰瘍の診断と治療
当院で診断した胃潰瘍の実際の症例をご紹介します。
(※写真の掲載については、患者様の許可をいただいております。転用はお控えください。)
症例1
50代の方で、胸の違和感や痛みを感じるとのことで来院されました。詳しくお話を伺うと、痛みの部位は胸の下の方、みぞおちに近い部分でした。また、食後に痛みが強くなるという特徴がありました。
そこで、内視鏡検査(胃カメラ検査)を実施しました。
画像に見られる白色の部分が胃潰瘍です。
ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)検査の結果は陽性であり、本症例の胃潰瘍の原因はピロリ菌感染によるものでした。そのため、除菌治療を含めた適切な治療を行いました。
症例2
次にご紹介するのは、同じく50代の方です。胃の痛みを主訴に来院されました。この方も食後に痛みが強くなるという特徴がありました。
内視鏡検査を実施しました。
この症例では、先ほどの患者さんよりも深い潰瘍が認められました。
この方にもピロリ菌検査を行った結果、陽性でした。そこで、除菌治療を含めた適切な治療を開始しました。
まとめ
✅ 「ただのストレス」と思っていた胃痛が、実は胃潰瘍だった… というケースは少なくありません。
✅ ピロリ菌感染や鎮痛薬の長期服用が主な原因 であり、放置すると症状が悪化することがあります。
✅ 胃潰瘍は 早期に発見・治療することで、合併症を防ぐことが可能 です。
特に、以下の症状がある場合は注意が必要です。
🔹 みぞおちの痛みが続く(食後または空腹時に悪化)
🔹 黒色便や吐血がある(出血の可能性)
🔹 食欲低下や体重減少がみられる
当院では、胃潰瘍が疑われる場合、早期の内視鏡検査を行い、速やかに対応いたします。
適切な検査と治療が、健康を守るために大切です。
症状が続く場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。